【不利益変更とは】
会社が一方的に就業規則を変更することにより、労働者が不利益となるような、労働契約や労働条件に変更すること。
<不利益変更の一例>
・〇〇手当の廃止や減額
・固定残業代(みなし残業代)の導入や変更による基本給の減給
・退職金規定の変更による減額
・所定労働時間の変更(長時間になる場合)
・所定休日の変更(少なくなる場合)や会社独自の休暇の廃止
・休職、復職の変更(条件がきつくなる等)
・定年年齢の引き下げ(65歳から60歳になる等)
・有給の残日数は取得が新しい日から時効消滅する。
・給与形態の変更(月給からオール歩合制への変更など) などなど
労働契約法第9条にて「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。」と定められています。
したがって、不利益変更を行う場合、原則労働者の同意が必要になります。
これは労働者の代表者だけでは無く、適用する労働者1人1人と同意する必要があります。
(労働組合がある場合は、組合員については労働組合との合意で足ります。)
<同意の方法について>
口頭による同意でも、同意があったと言えるのですが、実務上は書類による同意が必要です。
(口頭による同意では、内容を理解しただけの「はい」なのか、内容理解と同意を込めた「はい」なのか聞き分けがつかないからです。)
書類について、同意書という形式でサインを貰って原本保管をします。
同意書について、簡素すぎる内容ではダメです。しっかり内容の説明と変更による不利益の説明を記載した文章が必要です。(別紙でイラストや図を用いた資料を用意すると尚良いです。)不利益の内容も理解されたうえで同意を取る必要があるのです。会社がちゃんと説明を行ったことを証明するために録音するという事も良いですね。
ところで、労働契約法第10条には「使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。」と定められています。
つまり、経営状況の相当な悪化などの正当な理由、合理的でやむを得ない理由により、変更せざるを得ない場合には、労使間の合意が無くとも、不利益変更が可能となります。(就業規則の不利益変更は、同意しない従業員にも適用されます。)もちろん、こういった状況でも合意を得られない労働者に粘り強く交渉し続ける事は必要ですし、その過程を記録する事が会社を守ることにもつながります。
したがって、実務としては、変更の必要性を社員へ十分に説明した上で、可能な限り経過措置や代替措置を設けるなどして、就業規則の変更と個別の合意取り付けを行うことで、同意無しでの変更は可能であると考えられます。